堀鍔学園ストーカー教師
 ご不満ですかー?


「器量良し、気立て良し、頭脳明晰、お仕事は安定、家事が得意で料理上手。ついでに床上手なオレのどこが黒様先生はご不満ですかー?」


「自分の染色体答えてみやがれ」


 続・ご不満ですかー?


「器量良し、気立て良し、頭脳明晰、お仕事は安定、家事が得意で料理上手。ついでに床上手なオレのどこが黒様先生はご不満ですかー?」

「染色体。だいたい質問が前と同じじゃねーか」

「あのねー、そのオレの手料理食べて和んじゃって、お互いにお仕事には理解があって労ったりとかしてー。
そんな生活に馴染んで、黒たんこれからどんな女の人なら満足できるっていうの」

「…」


 恋愛指南


「まずは相手についてリサーチします。
何が好きか嫌いか。
趣味や食べ物、仕事の姿勢や休日の過ごし方。
出身地、家族構成、友人関係、交際履歴。
余裕があれば過去の犯罪歴や借金の有無、性癖なんかも確認しておきましょう」

「先生、後半が少し生々しすぎます」

「これで及第点だと思ったらいよいよターゲットロックオン。
外堀から埋めて逃げ道を潰しつつ追い詰めるも良し。
いきなり核心を攻撃してとどめをさすも良し。
培った情報網はフルに使いましょう」

「ファイ先生、聞いたのは好きな相手に振り向いてもらう方法のはずなんですが…」

「うん、頑張って振り向かせようねーvオレも頑張るー」

化学教師のアタックオンリー恋愛指南は多分間違っている。


 公認ですよ


「理事長ー、ひとつ質問してもいいですかぁ?」

「侑子でいいわよ。何かしら?」

「はーい、侑子せんせー。
この学校は職場恋愛禁止ですか?OKですか?」

「あら、誰か気になる相手がいるの?」

「はい、ちょっとー。
同僚を一人、毒牙にかけたいなぁ、なんてー」

「ファイ先生、覚えておいてね」

『面白ければなんでも有り、よ』



理事長公認ストーキング開始。


 舞台裏のストーカー


「…ひどい、星史郎先生。…信じてたのに」
「そんなに泣きそうな顔をしないで下さい。
第一、僕にも予想外のことだったんですから」
「だからってっ…!」




「この薬、黒むー先生に飲ませてもちっとも効かったじゃないですかぁ!!
星史郎先生ご推薦だっていうからオレ信じてたのにー!」
「黒鋼先生お酒強いですからね。人より肝臓の分解の働きがいいんでしょう。
僕としたことがうっかりしてました」

「次はもっと確実に黒わん先生の理性が吹っ飛ぶのをお願いしますねぇ」
「それでしたらこれがお薦めですよ。
ただ…」
「ただ?」



「少々非合法『かもしれない』ですが」
「お願いします(きっぱり)」


 アイロン


ファイ先生は本気です。


「ちょっと待て。なんでお前が俺の服にアイロンかけてんだ。
しかもそれ下着だろう」

「浮気防止対策」

「マジな顔して答えてんじゃねえっ!」


 思いのほか


「諦めるから一回だけエッチして」
「なんでそんな話になるんだ!」


「思い出とかよすがくらい残してくれたっていいじゃん。
そこまでやってダメならちゃんと諦めるよー」
「辞めとけ。後まで引きずるぞ」
「大丈夫ー。次に好きになれる人を早く探すから。
女の子だったら結婚とかしてー、男の人だったら一緒に暮らしてけるような人がいたらいいなぁ。

…一番にはならないかもしれないけど」

「(腹立ってきた)」



「だからこれっきりでいいからエッチして?」
「…」
「ねー」

「却下。
お前の言うことに耳傾けた俺がバカだった。」
「え、あの黒たん。言ってることと手の動きが違っ…!
ちょっ…」


「もうお前の言うことなんざ聞かねえ。

体だけとか、一回だけだとか、んな無責任なことは真っ平なんだよ」

 これで実はやってない


顔色が悪い上に目元は泣き腫らしたように薄赤く染まっている化学教師と、眉間の皺はいつも通りだがさりげなくふらつく化学教師のフォローをする体育教師が登校して来たその朝、学園中がどよめいた。

とうとうくっ付いたのか、と確認したわけでもないが皆がそう思っていた。


「今夜は祝酒ね」
目敏い理事長が瞳を輝かせる。
どうせ祝酒でなくても飲むくせに、と突っ込みたくなるのを堪え、四月一日は考えた。


お赤飯炊かなきゃいけないのだろうか、と。


 まだヤってないからお赤飯はお預けです。


「なんて甲斐性なしな男なの!?」

「違いますー、ちゃんと甲斐性はあるんです。

オレが痛くて泣きだしちゃったから、我慢してくれただけなんです」

「そういうのを甲斐性なしって言うのよ!」


 後悔先たたず


手遅れだと思った瞬間。

「おかえりなさぁい」

帰宅を出迎える同僚(例によって不法侵入)にごく当たり前に

「今日の飯は?」

と聞いてしまった瞬間。


 具材


苦労性の体育教師と天然ストーカーな化学教師がお付き合いを始めました。


「一回手をつけたもんは最後まで自分が責任とらなきゃいけねえだろうが」

「ねえ、オレは闇鍋の具材なの?」


 春の味覚その三 堀鐔ストーカー化学教師設定


わらびのレシピを探したんだけどその通りにするとなんでかしわしわで筋ばっかりになっちゃって美味しくなくてどうしたらいいんだろーって。
「で、なんでそれを聞く相手が俺の母親なんだ」
「前に職場の皆さんにって旅行のお土産もらった時にお礼状出したんだよ」
なんでそんなとこばっかり律儀に日本の習慣をわきまえているのか非常に謎だ。
「そうしたらお返事いただいてお母様とはそれからずっとお料理友達」
なんでよりにもよって一番の身内と付き纏われて迷惑している相手がすでにパイプを持っているのか。
「…どんな話してんだ」
頭が痛い。ついでに聞くのが恐ろしい。しかし聞かないわけにはいかない。

「好きな人には美味しい物食べさせてあげたいな、って」

「わらびの味付けのコツも教えていただいたんだよぉ。
煮付けるんじゃなくて先に煮汁だけ作っておいて、冷まして漬け込んでおいたら歯ごたえもちゃんと残るんだって」
ほんわりと頬を赤くして笑う化学教師は客観的に見れば可愛らしいのだが、実家への説明をどうすべきかという思案が脳内をフルスピードで駆け巡らせる体育教師には恐怖以外のなんでもなかった。
ついでにほんの数日前、化学教師お手製の夕食に出された山菜料理を食し、母親の味に似てるななんてぼんやりと思ったことも。


 最後の選択


「黒様せんせーに最後の選択をさせてあげまーす」
「なんだその上からの目線は」


「黒りん先生ってば照れ屋さんだから、オレが『大好き』って言っても素直に返してくれないと思うんだー」
「照れてねえよ。本気で拒否されてることに気づけ、どんだけポジティブだお前」


「まぁまぁ〜。
でね?」
「(心底聞きたくねえ…)」



「フラレて自暴自棄になったオレが生徒や他人に『慰めて』って燗れた関係をそこかしこで築きあげるのと、黒様が諦めてオレのこと受け入れちゃうのとどっちを選ぶ?」

「生徒人質にとるんじゃねえよ!
どんな二者択一だ!?」


 七夕話その一 堀鐔設定。ストーカー化学教師編。


『黒鋼先生と懇ろになりたい』




「この短冊を書いた馬鹿は今すぐ出て来い」
「わー、早速お願いが叶っちゃったー?」


その後、体育教官室で正座で説教される化学教師の姿があった。


 偽造


「なびいてくれない相手を確実に自分のモノにしてしまうには規制事実をでっち上げるしかないと思うんだ、オレ」
「自分で『でっち上げ』だっつってるじゃねえか」


 セクハラ教師


「…確かにサイズの問題だけに限定すれば近いものや惜しい気もするようなものはあるんだけど、決定的に補えない部分を発見するたびに形状の必然性も実感しちゃうんだよね」

「…スーパーの野菜売場で何の話してんだ」

「ちなみに大きさならこのゴーヤがイイ感じなんだけど、反り具合はあっちのキュウリかなー」

数瞬後、スーパーに鈍い拳骨の音が響いた。


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