客観主義
雁夜陵辱エロゲ妄想@監禁ルート
「久しぶりだな、雁夜」
「……お前の顔なんか見たくもなかった」
吐き捨てるようにのたまう雁夜を、時臣は余裕のある笑顔で見据えていた。雁夜は知らないが、ずっと、ずっと時臣は彼女を愛し続けている。
時臣が彼女に出会ったときから温め続け、大事にしすぎて腐りかけた愛情、否、欲望を伴った劣情の瞳を、今まさに雁夜に向けているのだ。
雁夜が間桐の家を出て、行方を知るのは妻の葵だけとなったときに、時臣の愛情は一度音を立てて壊れた。
いつでも手に入れることができると思っていた雁夜が、魔術師という選ばれし人種からただの人間に戻ったなどという耐え難い汚濁に吐き気さえする。雁夜も、時臣を少なからず想っていてくれたのだと、そう信じていたから、勝手に裏切られたような気分に陥った。
葵との婚姻も、子を成したことも遠坂の家のため、そして凛に魔術を伝え、家督を譲れば時臣の家長としての責任はなくなる。さらに、時臣が聖杯を手にすれば魔術師としての悲願は達成し、彼を止めるものなどいなくなる。
心から愛した雁夜を、彼女だけを愛することを、誰も止められやしない。
「こんな醜い姿、お前だって見たくなかっただろ」
「いいや、雁夜。私は嬉しいんだよ。君が、ようやく魔術師としての自覚を持ち、私の元に帰ってきてくれたことがね」
「なに寝言ほざいてやがる。俺がこんなになっちまったのも、桜ちゃんが間桐に来ちまったのも、全部お前のせいだろ!」
無意識に雁夜の周囲を蟲が飛び回る。臨戦態勢をとったそれらは、雁夜の感情如何でいつでも時臣に襲いかかるだろう。
「雁夜。私ならば君の身体を治してあげられる。私よりも治癒魔術に秀でた者もいるからね。それに、桜が間桐の次期当主として認められたのならば、君は自由だ」
「ふざけるなっ!あんな幼い子に……こんな、目にっ……あえっていうのか……」
「幼いからこそ、魔術を柔軟に受け止められる。むしろ、遅いくらいだ」
「黙れッ!」
けたたましい羽音を立てて、蟲たちが時臣に襲いかかる。と同時に炎によって焼き尽くされ、そして新たな蟲がまた彼に向かって牙を剥く。だが、今度は時臣が炎の壁を身に纏って雁夜に駆け寄り、彼女の懐に入り込んだ杖の先が華奢な鳩尾に吸い込まれた。
「ッ……ぐ……」
「傷つけるのは本意ではないがね。君はこうでもしないと止まらないのだろう?」
肋骨の二、三本は逝っただろう。だが、それが刺さる臓器すら体内には少ししか残されていない。雁夜はぐらりと前のめりに倒れ、時臣は優雅な手つきで彼女の身体を支えたのだった。
胸元から温かいものが全身に流れ込んでいく。そして、蟲たちが臓器を食い破る音がしない。雁夜は久しぶりに訪れた穏やかなまどろみにたゆたい、目を開けることを拒んだ。
「雁夜」
優しげに彼女を呼ばう声がするが、起きるためのきっかけには足りない。それをいいことに、声の主は雁夜に近づき、カサカサに乾いた唇に自身のそれを寄せた。
「ん……」
甘い吐息が雁夜の鼻から漏れ、触れた唇はさらに増長してぬめった舌を口腔に伸ばしてくる。こじ開けた唇から侵入した舌が雁夜の舌を舐り、ちゅぐ、と卑猥な音を立てた。
「ん、ふ……ン……」
さすがに様子がおかしいと気づいた雁夜が仕方なく目を開くと、そこにはいくら憎んでも憎み足りないくらい憎んでいる男の瞳が目の前にあった。
「んんんッ! ンーッ!」
慌てて引き離そうにも身体は言うことを聞かず、口の中に入り込んでくる甘ったるい魔力に負けて、歯すら舌を噛もうとしない。体中に満ちていく魔力が気持ちよすぎて、雁夜のすべてを麻痺させていた。
「んぐっ、んんっ、んっ!」
それでも必死に顔を背けようとする雁夜に、時臣の方が諦め唇をそっと離した。それだけなのに、舌と舌の間に透明な唾液の橋がかかり、雁夜をゾッとさせる。
「随分と魔力が尽きていたようだね。今まで、よく耐えたものだ」
「な、にを……」
「でも大丈夫だ。私に礼呪を渡して、治療に専念すればすぐに良くなる」
「バカ言うなっ! 俺はっ……」
「馬鹿を言っているのは君だよ、雁夜。こんな身体で戦えるはずがないだろう。それにしても、良かった。君の身体は、まだ女性として生きている。さすがに子宮まで喰われてしまっていては、再生は不可能だからね」
さす、と下腹を撫でる時臣の手に、雁夜の生理的嫌悪が甘い魔力の流れに勝った。治癒を続ける手を払いのけ、右腕右足だけで後ずさる。
「……さ、わるな……」
「雁夜? もう、いいのかい?」
「触るなっ寄るなっ!」
人間どころか、もはや死人のような身体でさまよう雁夜を、時臣はよりにもよって女性などとのたまう。確かに、彼と、そして彼の弟子の治癒術にかかれば、雁夜の身体はそれなりの機能を取り戻すだろう。
だが、それが時臣の身体を受け入れるためとなるくらいなら、歪んだ身体のままの死を選ぶ。
「雁夜、落ち着いてくれないか」
「いやだっ!」
時臣が雁夜の細い手首を掴み、軽く引っ張るだけで彼女は酷く泣き叫んだ。女として見られただけでなく、触れられたことにパニックとなり、常ではありえないほどボロボロと涙をこぼして逃げまどう。
「やっ、だ……た、すけ……バーサー……」
「雁夜!」
サーヴァントに助けを求める雁夜に時臣の方が限界を超え、彼女を無理矢理抱きすくめると、再び深く口付けた。
時臣を前にして別の男に、それがサーヴァントといえど男に助けを求めるなんて許せるはずもない。
雁夜は、ずっと時臣のものなのだと、遠坂時臣は信じていたのだから。
「ぅう、っ、ん、ぐ……」
「……雁夜? 何故、泣くんだい?」
上に覆い被さる男の身体は細いが、それなりに鍛えているのだろう、雁夜が暴れたくらいではビクともしない。優しく乳房に触れてくる手つきは紳士だが、目つきは飢えた男のものだ。
「ずっと、君を愛していたよ」
雁夜に向かって微笑む時臣の手が、彼女の最奥に触れる。丁寧に煽られた秘所からは愛液がどろりと零れ、時臣の指を濡らして奥まで誘い込む。指は簡単に雁夜の膣内を蹂躙し、そして、気持ちを裏切るように肉の壁は刺激を喜び蠕動した。
「や、だ……あお、いさ……が……」
「葵は知っているよ。私が心から愛するのは雁夜だけだと」
「え…………」
「それでも、遠坂の妻となると決めたのは、葵自身だ。雁夜が気に病むことはない」
これ以上ないほど雁夜の顔から血の気が引いた。時臣への怒りと、なにも知らずにいた自分への怒りと情けなさで吐き気がする。なにより、今、時臣を物理的に拒めない雁夜自身を、誰でもいい、殺してくれと心の底から懇願する。
「雁夜」
顔色を失った雁夜の心を読んだのか、時臣は彼女を安心させるように優しく、できる限り穏やかに言葉を投げかける。しかし、その声とは裏腹に、ようやく雁夜を手に入れられると猛る雄が、彼女の女陰に押し当てられていた。
「雁夜が私の子を産んでくれたら、その子は雁夜の好きに育てればいい。遠坂の魔術でも、間桐の魔術でも、両方でも。君が選びなさい」
「ッ、ぃ、ぁあああーーーーーー!」
ズン、と入ってきた熱塊が雁夜を支配し、快楽とともに甘い魔力がまた流れ込んでくる。熱に浮かされたまま、雁夜はただ、呪詛とも嬌声ともつかない呻きを漏らすしかできなかった。