夢逢

百目鬼×四月一日




夢逢


「何で夢でもお前に会わなきゃなんねーんだ!」
「知らん」
 四月一日は今にも脳の血管切れそうなほどの大声で叫び、百目鬼は別に痛くも痒くもない声にわざと耳を塞ぐ。夢の中といえども百目鬼の部屋の中であったし、物に触れられないという事以外は普段と変わりないのだ。
「せっかく侑子さんが、今夜は吉夢を見るのにいい月が出ているとか言ってたから期待してたのに、何でお前なんだよ!」
「……俺が魔を払うからじゃないのか」
「そう言う意味じゃねーよ!」
 夢の中でまで腹が立つと地団太を踏む四月一日の腕を百目鬼が引き寄せ抱きしめる。
「な、何す……!」
「そこは、空気の流れがよくない」
「み、見えるのかよ」
「お前の目でな」
 黒く淀んだ空気が霧状になって四月一日の後ろを掠めていった。夢での存在、魂そのものとでも言っていいのだろうか、それが直接、妖のものに触れるのは宜しくないという事は四月一日でもわかる。しかし、この体勢は非常に遺憾である。
「ど、百目鬼、離せよっ!もういないじゃんか」
「……侑子さんが……」
「はぁ?」
「しゃべっていた方向は、俺がいる方だったか?」
「え……そ、ういえば……そんな気も……」
 侑子がしゃべるとき、四月一日に聞かせる目的がある場合と、そうではなくどこかの誰かに聞かせるようにあらぬ方向で呟く場合がある。おそらく今回は前者であり、後者でもあったのだろう。
「だったら、吉夢だ」
 四月一日を抱いたまま百目鬼は囁く。
「ど、どうして……」
「お前が俺の夢に出てきたからな」
「お、俺の夢にお前が出てきたんだろ!」
「どっちでもいい」
 卵が先か鶏が先か、答えは出ないが結論としては魔女は間違ってはいないだけのこと。

2007年9月発行ペーパーおまけSS