金貸しの詩

黒鋼×ファイ




金貸しの詩 2


 背に手を回して下着のホックを外す。どうやら釦だけでなくブラジャーすら無理をしていたようで、伸ばされていたゴムがびよんと伸縮して一気に白い乳房が眼前にお目見えする。これは罠か、何かの罠なのかと尋ねたくなるほどにファイの身体は白く、艶かしい。
「ぁ……」
 男に触られたことなどあるのだろうか、否、この器量にこのスタイルだ、電車やバスなどに乗って痴漢に遭わない筈がない。勝手にそこまで想像して勝手に嫉妬して勝手にむしゃくしゃする。
「ひゃ……」
 赤い頂を指で摘み上げ、もう片方は鷲掴みにする。息を飲んだファイは顎を仰け反らせて快楽に耐えているようだった。
「おい、こっち向け」
「んん……ふ、ん……」
 従順に向き直ったところで再びその唇を塞ぐと、眠たげな仔犬が鳴らすような吐息が漏れた。くちゅりと舌を絡めると、ひくひくと胸元が揺れ、ビクンと太股が痙攣している。更に歯列をなぞると、もぞもぞと擽ったげに内股を擦り合せていた。じっとりと口腔を舐り、零れた唾液を舐めながら首筋を辿り、鎖骨に強く吸い付く。痛みを堪えるような、しかし甘ったるい声がして、調子に乗って摘んでいた赤い突起を唇に含んだ。
「やぁんっ……」
 身体中が震え、ファイの手が腕にしがみ付いてくる。容赦なく吸い、遠慮なく揉みしだくと、ファイの息は完全に上がって膝が立ち上がっていた。膝に手を置いて脹脛を撫で、いったりきたりして遊ぶと、今度は硬く閉じられた太股の内側に手を差し込む。流石に抵抗があり、押しのけようと無意識に手が動いていたが、軽く歯で胸元の充血した頂を噛んでやると、へにゃりと力が抜けて簡単に足が開いた。
「お前……痴漢にあったらいつもこうか?」
「……触られた、時には、速攻で腕を捻るようにしてたから……こんなに触られたの、初めてだよぅ……」
 可愛らしいことを言ってくれる、と湿り気を帯びてピンクが濃くなっている部分を布地の上からするりと撫でる。
「ひんっ!」
 大きな反応があり、更にそこが濡れる。むしゃぶりつきたくなるような激情を抑え、そろそろと撫で上げると、ファイは酷く乱れた。しかしながら、あまり腰を持ち上げるとさっきの不思議生物プリントが目に入り、萎えるどころじゃなくなる。するりと手を差し入れて下げると、細長い足から邪魔な布地を抜き取って向こうの方へ放り投げた。上手くプリントされた部分が下になってくれたようで、謎の生き物を目に入れなくて済んだようだ。
「あぁっあ……だめぇ……」
「何が駄目なんだよ」
「だってぇ……」
「こんなにびしょびしょに濡らしやがって嫌とか言える立場かよ」
 だってだってと口篭るファイは、手の甲で自らの口を覆い隠して真っ赤になって泣いていた。それが、男の劣情を掻き立てるなんて全く知らないに違いない。
「く、黒様の、指が……えっちなんだもん……」
「はぁ?俺のせいにすんな」
「いいえー黒様のせいですぅ……こんな、気持ちいーの……黒様じゃなきゃ、絶対……無理……」
 自分の言葉のストックがすっからかんなのが悔やまれる。こんなに愛らしい女が未だ嘗ていただろうか。経緯を考えると何処となく嵌められたような、やはり罠なのだろうかという疑問は尽きないのだが、ここまできて据え膳食わぬは男の恥、ここで食わぬは男に非ず。
「足開くのは、絶対俺だけにしろよ」
「言われ、なくても……そのつもり……」
 無理してふにゃりと笑いやがったそれは、直接下肢を攻撃してきた。腹が立ったので、細っこい足をひっ捕まえて広げると、その狭間にずぶりと指を突き立てた。
「やぁぁあっ……あ……」
「痛いか?」
「ンッ……すこ、し……」
「我慢して慣れろ」
「ひどぉい……」
 ぐるりと掻き混ぜると、卑猥な音が響く。突き入れるととろとろ溢れてくる愛液を、生唾を飲み込み眺める。痛いくらいにそそり立っている自らを、早くここに突き立てたくて堪らないのに、なけなしの理性がギリギリの縁で押し留める。すると、ファイの手が震えながら伸びてきて、シャツの裾を緩く引っ張った。
「……なんだ?」
「も、いい、よぅ……」
「馬鹿言うな」
「黒、様……きつい、でしょ……」
 どうしてこの状況で、襲っているほうが教われている方に心配されなければならないのか。それとも、ファイ自身が我慢できなくなったのだろうか。チッと舌打ちをして身体を屈めると、ぐちゅぐちゅに濡れたそこに顔を近づける。急いてしまうのはこいつのせいだと内心言い訳をしながら、赤くなった花びらに舌を這わせた。
「いやぁぁっだめ、だめっ……」
 煩いと怒鳴る時間すら惜しくて、否、ここの甘さに酔いしれたのかもしれない、唯只管そこを苛めた。ファイは最初酷く抵抗したが、少し硬くなった部分をカリ、と噛んでやると、まるでお漏らしでもしたかのように大量の蜜を溢した。
「ひぃ、あ……」
 快楽で何がなにやらわからなくなったのだろう、目が泳ぎ、焦点が合っていない。だがここまで辱められても、ファイは変わらず愛らしかった。
「……力抜いとけよ」
 伝わっていないかもしれないと思いながら、一応一声かけてから耳元で名前を囁いてやる。散々焦らしすぎたのがいけなかったのだろうか、ゆっくりと挿入しただけでファイは背を仰け反らせて絶叫した。ぎゅっと収縮したそこは、痛いぐらいに狭かった。
「ああああぁああぁっ……」
「ッ、狭ェ……」
 大きく痙攣した後、ドサリとベッドに沈み込む。弛緩した身体にはまだ張り詰めた怒張が入り込んでいるのだ、一度絶頂に達したところで繋がった部分は満足を覚えるはずがない。
「はぁあ、あぁ……くろ、さまぁ……」
「なん、だ……」
「きも、ちいいよ……」
 もっとして、と甘く囁かれてその気にならないはずがない。処女だ手加減だ外出しだと決意していたこともすっかり頭から消え去って、ファイの細い腰を抱え上げると、奥まで突き壊すが如くに腰を進めた。
「いっ、あっああぁ、やぁあ……」
 鼻にかかったような甘い喘ぎに、僅かな苦痛の色が混ざっているのを知っていたが、今更止まれるはずもない。擦れる粘膜から零れ落ちる淫液がファイの白い足を伝ってぽたぽたと落ち、辛うじて引っかかっているような紺色のスカートとシーツを汚していく。足にぴったりと張り付いていたソックスはずれ落ち、まるで一昔前に流行ったルーズソックスのように成り果てていた。
「あ、んあぁあっあ、あ、あ、あっ……く、ろさ、まっ……」
 ぎゅうぎゅう締め付けてくる、もう限界は近い。快楽に顔を歪めるファイが愛しく、これが自分のものになるのだと思うと全身が煮え立ちそうな興奮が湧き上がる。
「お前は、俺のものだ、ファイ」
好きだ、愛してるの類の言葉など自分には似合わないし、味気ないと知っている。だから、これが精一杯の告白なのだ。意識が混濁したままのファイには正確に伝わっただろうか。自信はないが、一瞬へにゃりと笑った気がして、それがまた下肢に直撃したのがいけなかった。
「あぁああっあ、あ……」
「っ、く……」
 どくどくと柔らかく温かい中に注ぎこんだ後で、後悔はしなかったが、気を失ったファイを見て少しだけ罪悪感が湧いた。それより何より、ファイが何歳であるのか、全く記憶にないのだ。えらく胸部の発育のいいこの娘が、十六歳であることを、せめて万が一に身篭った時点で十六歳であることを願うだけだった。



 残念ながらというか、タイミングのせいか、ファイは妊娠することもなく、元気に新妻をやっている。実際のところ、ファイが十六歳に成るが否や誕生日の朝一に戸籍を変えてやった。こいつの借金は俺がニコニコ現金払いでファイを連れ帰ったその日に完済している。しかしながら、その腕っ節の強さをボスに見込まれて、妻でありながら仕事の相方にいつの間にやら納まっていやがった。以外に経営の方にも造詣が深かったらしく、あの鬼で悪魔な少女と一緒に株式投信などを始めていたりする。
「じゃあね、セーラー服美少女回収部隊キャッツアイとか」
「色々古くせぇのが混ざってるぞ」
「えー駄目―?」
「駄目とか以前の問題だ」
 別にセーラー服を着ているわけではないが、馬鹿なことをつらつらとよくしゃべる。だが、ここは夫の寛容なところを見せるべきだと血管がぶち切れるまでは我慢する。
「ねーキャッチフレーズは『貴方と完済したい…』でどうかな?」
「ちったぁ黙れ」
 面倒な仕事は更に面倒になり、更にややこしくなった。白いセーラー服から黒のスーツに着替えると、これが、恐ろしく似合う。だが、胸元の釦はやはり可哀相だ。昨日も黒スーツにピンヒールで、敵対サラ金業者の阿呆共を踏み潰していた。こいつが細長い足で豚共を蹴り上げる様は、清々しいとしか言いようがない。
「ねーねー」
「黙れ」
「今日の晩御飯何にするー?」
「鯖の味噌煮」
「……わかった頑張る」
 生魚が嫌なら切り身で買えばいいのにとは教えてやらない。そうやって苦しむ姿もまた一興。
「あ、ここだねー」
「おう、踏み込むぞ」
「こーんにーちはーおかねかえしてくださーい」
「いいからお前は黙っとれ!」

 やっぱり、面倒だ。面倒で面倒で、退屈は、しない。


2007年11月ブログ掲載、2008年1月再録予定